RADWIMPSと実存の【光】哲学史から読み解く歌詞の意味
生まれてきた場所によって、所属するコミュニティによって、予め決められている常識という名の偏見。
日本という文化圏で成立している、ローカルなルール。
僕等は、それら普通と呼ばれるような、架空の価値観に囲まれて生活しています。
世の中の価値観は全て、捏造されていると言っても過言ではないです。
時に、誰かのマーケティングだったり、プロパガンダだったりします。
善と悪の区別。絶対的な価値の顔をしてる愛でさえ、いや、愛だからこそ、それが無い事で、寂しいとか、哀しいとか、苦しいとか思いながら、生きていかなきゃならない。
【光】の歌詞の中では、「君の事を壊したい」って、何やら物騒に聞こえるような事を言ってるんだけど。
これって、二人称の【君】が、振り払えない意味とか、囚われてる価値の事を言ってるんじゃないかと思うんですよね。
つまり、「そのフィルターを壊したいな」と言ってるような。
放り込まれた場所で自分を未来に放り込む
たまたま空いた穴に僕たちは 天文学的方程式で
産み堕とされたそれだけなんだ 本当にただそれだけなんだ
出典:シュプレヒコール
RADWIMPS/野田洋次郎
ロックバンドって、基本的に実存主義的な側面があるのかもしれない。
参照記事:実存主義って何?a flood of circleのI’M FREEに意味を繋げてみる
そう思ったのは、若者にとって彼等は、既存の価値観をひっくり返す象徴だったりするからです。
その当時、唯一絶対の価値観であった、キリストをディスったニーチェのような。
参照記事:ルサンチマンって誰だよ!?
「神は死んだ」っていう、カウンターによって引き継がれていく、本質から実存へのパラダイムシフト。
誰かのテーゼにぶつけられる、アンチテーゼによって生まれるジンテーゼ。
そのジンテーゼにぶつけられる、アンチテーゼ。
ヘーゲルの弁証法的に、発展して来た人間の文化。
この瞬間もとめどなく ほら
白と黒とがやり合ってんだ
出典:シュプレヒコール
RADWIMPS/野田洋次郎
近年の若手哲学者、マルクス・ガブリエル(敬称略)が、哲学界のロックスターって言われてるのも、そういうニュアンスを内在しているからなんじゃあないでしょうか。
社会では常に他人から意味を押し付けられている
正しい街に 正しい歌に やけに一人取り残されて
出典:光
RADWIMPS/野田洋次郎
例えば、バラエティ番組の影響による、お笑いファシズムみたいなものがあると、僕は考えています。
笑いこそ正義。人を笑わせるユーモアのない、つまらない奴は価値なし。
それは独特の空気となって、その【場】に蔓延する。
悪気が有ろうと無かろうと、主観の同調圧力は飛び交う。
当然、マジョリティーに囲まれたマイノリティーは、行き場を失う。
そういった図式の環境下で、大事にしてた気持ちを大事にしようとするのも、容易な事ではないですね。
そういうのを、ニーチェは背後世界って言ったり、リップマンは疑似環境って言ったり。
われわれはたいていの場合、見てから定義しないで、定義してから見る。
外界の、大きくて、盛んで、騒がしい混沌状態の中から、すでにわれわれの文化が、われわれのために定義してくれているものを拾い上げる。
そしてこうして拾い上げたものを、われわれの文化によってステレオタイプ化されたかたちのままで知覚しがちである。
出典:世論/W.リップマン
勿論、1日1回でも笑顔をつくるとか、それが出来たら、嘸かしハッピーな事でしょうな。
深刻そうな顔をするのは、実に容易な態度だと改めて気付いた日、状況に合わせて、フザけた事を言えるのはお洒落な人だって思いますよね。
でも、それが【そうあるべき】っていう他人からの押し付けになったら、もう知るかよって話ですよね。
この記事でも述べましたが、一定の境界線を、容易く飛び越えようとする図々しさは、人を救うし、時に人を殺すんですよ。
参照記事:【おばさん(BBA)あるある】自分が100%正しいと思い込んでる人の特徴と対処
これと同じような構造ってのが、世の中には溢れていて、刷り込まれた誰かの意味を、自分で選び取ってないのなら、生き辛い思いをするくらいなら、そんなもん捨てちまえと、自分で選び取れと、実存主義者は言う訳です。
例えば、サルトルは投企という名の主体性を、主張しました。
此処で言う【光】って何なのかって言うと、【生きてる】って事ですよ。
呼吸してるって事です。
そこに、意味も価値も無いでしょ。
私たちは光った 意味なんてなくたって
私たちは光った ゴミたちの木漏れ日で
私たちは引っ張った 繋がれた首飾りを
力まかせに今 夢まかせに ただ
出典:光
RADWIMPS/野田洋次郎
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