【感想】子育て世代の親が【未来のミライ】に共感できなかった理由を語る

未来のミライの広告

細田守(敬称略)映画のシンボルである、青空と入道雲。

これを見るだけで僕はもう、わくわくしてしまいます。

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mikio

細田守の夏が来たー!

しかも主題歌は山下達郎(敬称略)。

サマーウォーズの時の、感動シナジーコンビ再来!と、個人的には期待が掛かります。

大学時代に、サマーウォーズを映画館で観て以来、心を鷲掴みにされた僕は、それ以降の細田映画は欠かさず映画館へ足を運ぶようにしている次第です。

さぁ今回は、どんなを見せてくれるのだろう?と、期待で胸一杯の状態で、娘と劇場に足を運びました。

サマーウォーズの頃はまだ学生だったので、まさかその9年後に、娘と細田映画を見に行く事になるとは、夢にも思わなかったです。

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で、結論から言うと、4歳と2歳の子供を持つ父親としては、子育ての描写が「綺麗すぎる」って思いました。

広告で打ち出されているイメージと映画の内容にギャップがある

今作はいつになく、街の至る所にポスター、即ち、広告が打ち出されているように思います。

個人的にはこれが、逆効果になっているんでないかと感じるんですよね。

何故なら、広告の放つイメージと、実際の内容のイメージが、悪い意味で違うからです。

バケモノの子の余韻が残ってるが故に、今回は期待していたニュアンスと違ったってのもありますかね。

勝手な先入観を持ってしまった、自分も悪いんですけど。

つまり、【未来のミライ】と云うタイトルや広告は、SF的なエンターテイメントを仄めかしているんですけど、実際は主人公のくんちゃんの、脳内の範疇のような話なんですよね。

そこに、イメージのギャップがある。

生意気な事を言えば、設定はすごく良いんですけど、それを活かしきれていないのかなと。

カールじいさん見た時と、同じような気分になりました。

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風船で家飛ばすって言う発想はすごく良かったのに、話が進む程に平凡な展開になっていくっていう。

そこの勿体無さって言うんでしょうか。

少なくとも、THE夏のエンターテイメント。って感じでは無かった訳です。

てっきり、ミライちゃんと二人三脚で、冒険的な展開を踏むのかと思いきや、ミライちゃん自体の出番が少ないですし。

サマーウォーズみたいなニュアンスを期待すると、期待と内容に、ギャップを感じてしまう事でしょう。

【横浜の壁面広告】画像で振り返る【細田守映画】5作品

映画が公開されている期間は、横浜駅の地下街にある有隣堂(コミック王国)の通路で、細田守のこれまでの変遷が壁面広告になっていました。

これに沿って、今までの作品を振り返ってみます。

横浜駅地下未来への道入り口

時をかける少女

横浜駅地下未来への道1

サマーウォーズ

横浜駅地下未来への道2

おおかみこどもの雨と雪

横浜駅地下未来への道3

バケモノの子

横浜駅地下未来への道4

未来のミライ

横浜駅地下未来への道5

細田守は元々、東映アニメーションの人なんですよね。

従って、それ以前にもデジモンや、ワンピースの劇場作品を手掛けています。

見れば直ぐに、細田節が炸裂している作風に気付くかと思います。

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彼が人物の影を描かない事は、昔から有名な話ですよね。

表面的に複雑なものを描く事より、本質を描きたいから。との事)

遠くから見守るような、引き(ロングショット)のカットも然り。

細田守がフリーになってからは、今作で5番目の長編アニメーションです。

  1. 時をかける少女(2006)
  2. サマーウォーズ(2009)
  3. おおかみこどもの雨と雪(2012)
  4. バケモノの子(2015)
  5. 未来のミライ(2018)

アニメーター細田守とジブリとの接点

実は、スタジオジブリとの関わりもあります。

スタジオジブリの研修生採用試験では絵を2枚以上描いて提出する一次試験で150枚以上提出。

宮崎駿から「君のような人間を(ジブリに)入れると、かえって君の才能を削ぐと考えて、入れるのをやめた」と書いた手紙を貰ったが、「雑用係でもいいから入れてください」とジブリに電話をすると

「今回の試験で宮崎さんが手紙を出したのは、全受験者中二人しかいない。その一人が君で、これは光栄なことだから、おとなしく諦めなさい」

と言われた。

出典:細田守 – Wikipedia

その後、ハウルの動く城の監督として着任する機会を得るも、絵コンテの制作に行き詰まります。

結果、2002年4月21日に「細田君、これもう無理だね」とプロデューサーに告げられ、頓挫している。

そんな苦い過去もあるのです。

細田守が夏休み映画を作る理由

細田守と言えば、一貫したイメージにがあります。

最早細田ブランドですよね。

何故これ程までに、一貫してを舞台に描き続けるのか。

そのスタイルを示唆している言葉を、3年前のNHK番組、プロフェッショナルにて残しています。

人って夏場に成長すると思うんで、本当に。

夏の暑い中でこう、人間一皮むける、何か重要な1日とかさ、重要な体験ってのはあると思うんで

それと入道雲って、すごくセットになってるような気がしますよね。

出典:プロフェッショナル仕事の流儀

夏の入道雲の雄大な姿に、登場人物の成長を重ねている訳です。

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mikio

夏。良いですよね。未だにセミが鳴き出すと、何かが起きそうな、わくわくした気持ちになります。

映画館で娘と見た【未来のミライ】の感想と考察

注意※では、以下からはネタバレ含みます故、ご了承下さい。

全体通して、観念的な話でしたね。

抽象的な歌詞を扱う、バンドの演奏を聴く時のような感覚。そんなニュアンスでしょうか。

僕は好きでしたけど、論理系の見方をする人からすれば苦痛でしょうね。

登場人物が、フィジカルにタイムリープしているのか。

はたまた、くんちゃんの脳内での空想上のタイムリープなのかが、曖昧だからです。

くんちゃんの認識の中で、時間軸の飛躍が生じている現象に関しては、白昼夢的なニュアンスが強いのかな。

個人的には、恐らく自分の遺伝子に刻まれた、過去の血筋の記憶を、夢のように無意識に見ているのかなと。

そんな解釈でした。

そして、家が舞台の為、ストーリー上、起伏や推進力は出し難い設定になります。

一言で言うと、地味です。

そこは、タイムリープというギミックを使う事で、展開を転がしています。

それでも何処か、単調な印象は残りましたが。

幼児にとっては、些細な事も大冒険ですから、庭を通じて非日常への唐突なジャンプ

といったアプローチは、主人公が4歳児ならではの展開なんじゃないかと思います。

基本的に細田映画は、定点観測のような日常と、そこにインサートするファンタジーを交錯させる事で、映像的な快楽を描く監督だと思っています。

基本的には、どんな人であれ、手掛けた作品には結果的に、自分が投影されてしまうものです。

物書きってのは、自分の人生を切り売りするようなものなので。

過去作品のインタビューから察するに、今作は特に、細田守自身の実体験を映画にそのまま反映させています。しかも露骨に。

僕個人としても、年の近い子供が2人居る事から、なんとなく察するんですが。

その辺の、子育てに於ける日常のディティールを、記憶が鮮明な状態の内に、丁寧に描き切りたかったんだろうなと。推測しています。

庶民が見ていて居心地の悪さを覚える上流階級の子育てシーン

母と子

舞台が横浜(磯子)である事や、家族構成が自分とほぼ被っている事、主人公くんちゃんと、自分の娘が完全に現在進行形で同世代である事。

これだけ自分との類似点があるので、どうしても劇中の家庭と、自分の家庭との相対化から、逃れられなかったです。

子育て世代には、オーバーラップする部分が勿論あります。

但し、そこには共感出来る点と、居心地の悪さを覚える点があったんですよね。

例えば、物語の舞台となる一軒家の件。

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mikio

劇中で描かれる家がまー、オシャレ。

実際の建築家、谷尻誠(敬称略)がデザインしているだけあって、独創的な内装で、絵的にも映えるような構造なんです。

その時点で当然、なんだか楽しそうで、綺麗で、広い家での子育てになりますよね。しかも、優雅。

(映画の舞台が、主に室内になるので、映画的には必要となるデザイン性なのだとは承知してはいますが)

その中で、子育ての理不尽さや、奮闘を描いているようでしたが、僕には余裕で一杯の、富裕層の日常にしか見えなかった。

つまり、「ウチはこんなに裕福で素敵な家庭じゃないなぁ」「もっと禍々しいなぁ」と云う、妙な罪悪感劣等感を抱かされたんですよね。

思わず子供に、ごめんねって言いたくなるような。

その辺が、全然共感出来なかった

普通とか、幸せとか、常識とかって、時に人を傷付けるとさえ思いました。

【4歳児】という設定とミライちゃんへの理解

主人公のくんちゃん(太田訓)で気になった事があります。

設定上は4歳なんですが、言動が2歳後半くらいにしか思えなかったんですよね。

勿論、個人差はありますけど、4歳ってもうちょっとお兄さんなんじゃないかな、と思う。

これは、トトロのメイちゃん(4歳)を意識しての設定との事です。

一方で、「未来から来たミライちゃん!?」と、瞬時に時間の認識をする発言から、未来の概念は理解しているんだなーと、違和感を抱いたり。

同年代の子供を持つ親の観点からすると、その辺のディティールは、嫌でも気になってしまうところです。

例えば、僕の娘は、「昨日」の事を「明日」と呼んでしまう節があります。

「それね、あしたにやったよ!」みたいな具合。

文脈的に、過去の事を話しているのは解るので、「それ昨日ね」と突っ込めるんですが、未来の事っては、まだよく解ってないように感じます。

従って、娘としては、突然現れた制服姿の女の子が、くんちゃんの妹

つまり、【赤ちゃんの未来の姿である】と云う認識に関しては、結び付いてなかったようです。

【未来のミライ】を見てる時の幼児の反応(自転車シーンがウケてた)

この映画、実際、幼児にはどうなんだろう?

実際、娘に何処が面白かったのかを聞いてみると、「オニババ!」と言っていましたね。

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mikio

(あぁそこかー。でもまーそうだよな。インパクトあるよな確かに)

絵本|オニババ対ヒゲ

それと唯一、娘がケラケラっと笑ったシーンが、自転車のシーンでしたね。

岸根公園で、お父さんと、何度も自転車に乗る練習をしながら転びまくるシーンがあるんですよ。

そこでのお父さんの、転びっぷりが面白かったみたいです。

但し、【未来のミライ】を見終わった後の、8月4日に、フジテレビの土曜プレミアムで放映されていた、Mr.インクレディブルを見た時の方が、反応が解り易く良かったですね。

これはどうしても、今作の内容が、エンターテイメント性に欠ける部分があるからでしょうね。

緊張感の無い、ハラハラしない内容だったので。

くんちゃんの立場に【娘】の共感はあったのか

すきくないの

劇中、くんちゃんが、妹のミライちゃんの事を「好きくないの!」と、新幹線でぶん殴ったり、妹の顔を引っ張って遊んだりするシーンがあります。

実際、娘も弟の事を、「好きじゃない!」と叫んで一方的に拒絶したり、体を押して転ばせたりと、似たような態度を取る事があるので、やっぱり何処もこんな具合なんだなーってのは認識しました。

例えば、自分の息子が音楽にノッて足踏みをしている姿に、「イイね、その動き」と声を掛けた直後に、姉ちゃんがそれ以上の動きでダンスをし始める。みたいな。

関心を自分の方に向けようとしているのが、解る時があります。

同様に、くんちゃんが独占していた親の関心を、妹に持ってかれた時の感情って、

だよねーあたしもそうよ」なんて、共感出来るんじゃないかなーとは思うんですが、その辺は実際どうだったのだろう。

そういった、同世代ならではの目線に於いての、「あるある」的な楽しみ方はあったのかな?と、興味はありますが。

そこに関しては、娘のみぞ知る謎です。

家族のツリー構造と些細な出来事

デジモンから脈々と受け継がれている、細田映画特有の、デジタルっぽい異次元空間の描写は今回も健在です。

そこでのモチーフが、ツリー構造のメタファーでしたね。

ツリー構造は、家系図の、トーナメント表みたいな枝分かれの線の事です。

WEBデザインを勉強していなかったら、この階層の概念には気付かなかっただろうなと思います。

その点、一つ多めに楽しめた気分です。

この映画で一番印象的なシーンは、劇中の時間軸では亡くなっている、ひい爺ちゃんが、戦争の空襲で爆撃を受けて、船の瓦礫と共に海に浮いてるシーンでした。

他の仲間の死体が浮く中、たまたま足を負傷しただけで生き延び、命からがら空を仰ぎ、手を伸ばす。

そして、泳ぎ出す。

それぞれの時代を、生き抜いて来た親が在ってこそ、今の時代に受け継がれてきた命がある。

つまり、主人公であるくんちゃんの命に繋がっている

生き延びるって事自体が、シビアな時代の象徴として、あの描写だったのかなと。

終盤で、家族の過去を俯瞰で眺望しながら

ほんの些細な事が幾つも積み重なって、今の私達を形作ってるんだ

とミライちゃんが話すシーンは、此処で僕が記したかった感傷を、上手く言葉で表していました。

参照記事:時間と云う物差しが裏打ちするもの|リメンバー・ミー

ああ、そう。それが言いたかった。と。

家族とか、時間を遡るとか、近年のトレンドなのでしょうか。リメンバー・ミーもそんなお話でした。

待たれよ!次の夏休み!

僕が細田守に期待してしまうのは、やはりサマーウォーズのように、THE夏休み。な描写。

そして、淡くノスタルジックな気配。

バケモノの子のように、熱い感情を喚起させる展開。

つまり、王道なエンターテイメントですね。

そういった観点から見れば、今作は新しい試みであって、チャレンジだったかと思われます。

この作品を糧に、サマーウォーズやバケモノの子のような、エンターテイメントがまた見たいですね。

僕の心に居る少年を、ざわめかさせてくれ!

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mikio

細田守の夏を、次も待ってますぜ。

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