美しい一撃を放つ日本のバンド【THE NOVEMBERS】の音楽と哲学
mikio(@mikio_96 )です。どうも。
斬れ味が凄まじい、刃物のような音を放つ。
そして、【美】のみを追求するバンド、【THE NOVEMBERS】
THE NOVEMBERSの曲って、憂鬱な気分の時に抗う力をくれるとか、感動して泣いてしまう。
みたいな要素って、あんまり無くて。
- ただただ、その美しさに見惚れていたい。
- 攻撃的なリフの渦の中で、陶酔していたい。
- 放たれた音の振動が喚起する快感情に、身を委ねていたい。
僕にとっては、そんな感覚を期待するバンドです。
気持ちがいいんです。
そもそも、小林祐介(敬称略)というフロントマンは、歌詞カードを見ないと、何を言ってるのかよく解らないくらい、咆哮的な歌い方をする人であり、その歌詞も、かなり抽象性が高い。
歌詞の抽象度に関しては、ROCKIN’ON JAPANでこんな言葉を残しています。
僕よく思うんですけど、歌詞が断定的であったり、ものすごく具体的であったり、ハッキリした明確なものだとするじゃないですか。
例えばそれが、社会を風刺したいっていう目的のもとに作られたものだったとしたら、それってものすごくあやうい表現だというか。
人の心には絶対刺さらないだろうっていう、理論が僕はあるというか。
何でかって言うと、それはただクソ真面目に自分の中のエゴを言葉に連ねて説教しているだけで、説教に対して人っていうのは、支持者以外は拒否反応が起こるじゃないですか。
で、僕、髭(HiGE)とか、そういう人たちをなんでいいなと思うかっていうと、歌詞にユーモアがあるんですよね。例えば、自分がほんとは人に「どうだ?」って問いかけたい刃物が心の中にあるとするじゃないですか。
で、さっき言ったクソ真面目な人たちは刃物を突き突き付けてるわけですよ。それを人はみんな嫌がるけど、髭(HiGE)みたいに、刃物じゃなくてバナナを突き付けてみんなが安心して手を伸ばした瞬間に、実は刃物だったって言う、そういう表現が本当に人の心に届くと思うし。だからユーモアっていうのは、なんていうんだろうなぁ、そういう刃物をより刃物たらせる存在なんですよね。
だから僕の歌詞が抽象的だったり、どこかしか言い回しが比喩的で不明確っていうのは、ただ文学的な雰囲気を出したいとかじゃなくて、直接的なことをあえて言わないっていうのもあるし、その言葉が好きだったりもするしって、いろいろあるんですよね。
出典:ROCKIN’ON JAPAN VOL.347/p158/小林祐介
実際に、ライブハウスに行って、目の前でビリビリとした爆音を浴びる時、正直、歌詞って重要じゃない。
ステージ上で楽器持って動く人間の態度、スポットライトの光、空間を支配する爆音。
目の前で繰り広げられる人為的な現象に、神経を注ぎながら、音の渦の中で、ひたすらドキドキするのです。
落合陽一(敬称略)が、音楽って耳で聴くものだけではない。
目で聴くものだし、体で聴くものだし、耳でも聴くものだし。
と言っていました。
ライブハウスなんて、正にそれですよね。
イヤホンのように、耳だけで聴くんじゃなくて、体で聴きに行くもの。
— mikio@漫画家のなり損ない (@mikio_96) 2018年10月7日
【ライブの良さ】
CDでは認識できない、曲の魅力に気付ける事。
ステージ上での、楽器に対するそれぞれの指の動きとか、身体の使い方や癖、佇まい等を含めた視覚情報。
直接目の前で鳴ってる音。その迫力、印象。
特にベースとドラムって、「こんな風に鳴ってたんだ」って、感じ取る事が多い。
— mikio@漫画家のなり損ない (@mikio_96) 2019年3月1日
THE NOVEMBERS【小林祐介】の哲学
そもそもに於いて、彼らの追求する【美】とは何か?
小林祐介(敬称略)は、こう述べています。
僕はきれいなもの、美しいものが好きだ。きれいな人も好きだし、美しい言葉も好きだ。
それを見ようと目を凝らすのも好きだし、直視し過ぎて目眩を起こすのも好きだ。
しかし、何が一番大事かというと、「美しい」とは何かだ。
それはきっと「もの」と自分の「繋がり」の中にある。
美しさは「もの」に内包されない。
そうでないと、僕たちは皆、同じものを同じように美しいと認識できなければならないはずだから。
出典:THE NOVEMBERS/WEBLOG/小林祐介
此処であれこれと、【美しさ】を言葉で説明しようとする事自体、野暮な事です。
音楽から受け取った【あの感じ】を、形容しようと、言葉を添えてみても、結局は途方に暮れるだけですから。
彼岸と此岸を隔てる大きな川の向こうに見える美しい花火が、その実、残虐な戦火だったとしても、感じた美しさに偽りはありません。(そこに悲痛な想いがあってさえも)
出典:THE NOVEMBERS/WEBLOG/小林祐介
そんな自分が、美しいと感じたものに対して、正しいとか、間違いとか、良いとか、悪いとか、無いって事ですね。
例えそれらが、冷静に見たら不健康的なものだったとしても 、美しさを感じる自分を止めることは出来ない。
「そうだ、もともと僕は意味とか価値とか正義とか悪なんて、どうでもよかった。ただ美しいものが大好きなだけだった。目眩がするほど。子供の頃からそうだった。」
意味がないとされているものから価値を見いだし、価値がないとされているものに意味を見いだす。
ノイズと呼ばれる物事から美しさを見いだし、美しいと感じる物事が孕んでいるノイズを肯定する。
出典:THE NOVEMBERS/WEBLOG/小林祐介
これを見たら、彼らが【何故この音なのか】ってのは、解って来ますよね。
これが、THE NOVEMBERSのサウンドを裏打ちする、哲学の一部です。
魅力的なもの程【暴力的】
僕は、魅力的なもの程、暴力性が高いんじゃないかと思うんですよね。
例えば
- カッコイイ
- 激しい
- 美しい
- エロい
これはつまり、意識を持ってかれる程の、暴力性が内在しているからですよね。
例えば、この曲を聴いてると、音の渦に呑まれて骨抜きにされてしまうのですよ。
THE NOVEMBERS / 1000年
息をするのを忘れて、苦しくなる位の激しさと美しさで、窒息しそうです。
以下の曲も、不穏でダウナーでカッコイイ。
THE NOVEMBERS / 鉄の夢
彼は実際ライブで見ると、人形のような佇まいでした。
どういう事かと言うと、綺麗でした。
男に対してこの形容は、変な感じなんだけど、本当にそう思ったんですよね。そして靴がピカピカだった。
ギターを【ジャーン!】した時のあの感じ
THE NOVEMBERSって、バシュン!!とかドーン!!みたいな音が、格好良いのですよ。
いきなりオノマトペですいません。
例えばdogmaの頭打ちで鳴る、「バシュン!!」って音があるんですが、あれ、聴いてるだけだと、どうやって音を出してるのかよく解らなかったんですよね。
THE NOVEMBERS / dogma
ライブを見に行って判明したんですけど、ドラムのクラッシュシンバルから、あの「バシュン!!」の音が鳴っていました。
初めて見ました。ドラムにもエフェクターってあるんですかね?
以下の記事でも紹介したんですが
参照記事:【迫力の秘密に迫る】エレキギターとアンプをシールドで繋いだ時あなたは怪獣王ゴジラになる
これ程までに【美しい一撃を放つバンド】って、僕の知る限りでは、他に類を見ません。(居たら教えてほしい)
シド・ヴィシャスが、
ただコード弾いてブーンって鳴って、そしたら音楽だ
って発言を残しているけど、初めてストラップを肩に下げて、ギターを抱いて、コードを抑えて、ジャーン……!ってやった時の感動。それを極限まで磨き上げると、こうなるんですね。
THE NOVEMBERS / Hallelujah
そのジャーン……!!!がドーン……!!!な曲が、Hallelujahなんですよ。
この一撃こそが美しい。
毎日のように聴いてしまう曲です。
今日は何聴こう?ハレルヤ聴こう!
そんな感じで、反射的にセレクトしてしまう位に、好きです。
THE NOVEMBERS / Misstopia
最後に、自分の人生史上、最も【美しい】と感じた曲を、紹介させて下さい。
ビープ音のような無機質な音が、緊迫感を喚起し、泡のように弾けていく美しい音が、多幸感を齎す。
これは、一つの切り口に過ぎないのですが、美しい有様ってのは、そのものの純度が高い事で成り立っています。
混ざり過ぎたら、くすんでゆく絵の具のように、自分以外の存在の影響で色は変わります。
不純物を受け付けない気高さが、美しさを形成しているのではないだろうか。と。
その意味で、THE NOVEMBERSは【美】の純度が高い。
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