RADWIMPSの【週刊少年ジャンプ】の叙述トリックを考察してみた

2020年5月2日バンドレビュー

自分で自分を応援

おはようございます。

mikioです。どうも。

1年前の話になりますが、RADWIMPSの8thアルバムである、人間開花をiTunesで同期しました。

皆さんご存知、前前前世が収録されているアルバムです。

早速、ファミレスでiPodをポケットから取り出して、アルバムの流れに耳を澄ませていたんですよ。

そして、8曲目に収録されている【週刊少年ジャンプ】という曲に差し掛かります。

個人的には、興味深いタイトルです。

「どんな曲なんだろう?」と何気無く聴いていたら、曲の終盤に向かうと同時に、気付いたら、メガネと頬の隙間から涙がボロボロ落ちていました。

突如、感情の波が押し寄せて来て。

びっくりしたと同時に、ファミレスで1人号泣してるのも危ういので、慌ててニットの袖で目元を隠しました。

これ程までに、自分の感情が光り出す瞬間を迎えるのは久しぶりだったんですよね。

その時感じた、言葉を手渡していく過程。

つまり、詩の構成が興味深かったので、この感情の流れを改めて、自分なりに考察してみました。

こんなのはナンセンスだけど、言語化せずに、なんとなく忘れてしまう事の方が自分にとっては不毛なので、此処に残します。

※もし未聴で曲に興味を持っている方であれば、以下はネタバレになるのでご了承下さい。

まずRADWIMPSの【週刊少年ジャンプ】の歌詞を引用する

本当は歌詞を分離させたくはないんですが、公式YouTubeは期間限定の動画だったので、現在はここに貼れません。

さすがに、リリースされてからもう1年以上経つので、好きな人は既に聴いてる筈でしょう。

という理由から、便宜上、此処へ引用してみます。

週刊少年ジャンプ的な未来を 夢みていたよ

君のピンチも 僕のチャンスと 待ち構えていたよ

毎晩少年ジャンプ的な夢で 忙しくてさ

汗まみれで朝起きるたび 命カラガラで

ママに「おはよう」

机は窓際 君のとなり

遅刻と罰掃除と居眠りだってヒーローはそうじゃなくちゃって

キザでキラキラした台詞も

使う予定なんかはないけど ちゃんと毎晩お風呂でこっそり唱えるよ

未来のヒロインにいつか渡すために

誰一人内緒で 育てるんだよ

週刊少年ジャンプ的な未来を 夢みていたよ

君のピンチも 僕のチャンスと 待ち構えていたよ

きっとどんでん返し的な未来が僕を待っている

血まみれからの方がさ 勝つ時にはかっこいいだろう

だから今はボロボロの心にくるまって 夢をみる

縮んだ心に なんとか釣り合うように

丸めてた猫背ももうやめてよ 下を向いても あの頃の僕はいないよ

「ほら僕は ねぇ僕はここだよ」

どこの何者でもない君も あの時の少年は最前列で君のことを

君だけを見ているよ 君だけのヒーロー 君だけを見ているよ

ナレーションをつけてさ 瞬きひとつせずに見てるよ

やっとこっから勇者は 栄光に向かい立ち上がるのです

血まみれになったプライドも さらに強く強く握りしめ仇を取りにいくのです

自分を捕まえにいくのです

そして少年も立ち上がるのです その声の限り振り絞るのです

ついにドアは光を放って開かれる

週刊少年ジャンプ的な未来を 夢みていたよ

僕のピンチは 僕のチャンスと 待ち構えていたろう?

週刊少年ジャンプ的な未来を 夢みていたよ

君のピンチも 僕のチャンスと 待ち構えていたよ

きっとどんでん返し的な未来が僕を待っている

血まみれからの方がさ 勝つ時にはかっこいいだろう

だから今はボロボロの心を隠さないで 泣けばいい

出典:週刊少年ジャンプ

RADWIMPS 野田洋次郎

RADWIMPSの【週刊少年ジャンプ】は叙述的に認識のレイヤーが重ねられる

では、順を追って、この歌詞のメカニズムについて考えてみます。

曲を聴き始めたリスナーの、冒頭のぼやっとした認識としては、日常描写ですね。

誰かが、週刊少年ジャンプを読んでたと。

文体は過去形だから、青年くらいの年齢を想像する。

少年ジャンプ的な夢で忙しいってのは、身に覚えがある男ばっかりじゃないでしょうか。

なぜなら、男という生き物は、基本的に、見えない敵と闘っているのが世の常であります。

それに対して

ママに

という単語で、この曲の一人称が、子供目線である事が明示されます。

それからは

  • 机は窓際
  • 君のとなり
  • 遅刻と罰掃除

この単語の連なりによって、その子供が、小学生くらいの年代であると推測され、人物像が限定されて来ます。

そこからは暫く、小学生の目線描写が、散りばめられる展開となる訳です。

ところが

だから今はボロボロの心にくるまって 夢をみる

このフレーズで、今までの描写が一気に、過去の回想だった。

という、予期していない、ちょっとした叙述トリックがぶっ込まれます。

そして

下を向いてもあの頃の僕はいないよ

このフレーズで、完全にこれまでの描写が過去に持ってかれた事が確定します。

そして、現在の青年なのか社会人なのか解らないけど、大人の立ち位置に、目線がジャンプする訳です。少年ジャンプだけに。

叙述トリックとは

叙述トリックという手法は、小説特有の手法です。

従って、映像で表現するのは難しい表現です。

なぜなら、文章に仕掛けを施して、読者にミスリードを仕掛ける方法だからです。

どんな手法かと云うと、例えば「俺は今日もバーカウンターに座り、タバコに火を灯した」なんて描写があったとします。

一見男だと思いますよね。

しかし、実は一人称を「俺」と呼称する女の話だった。みたいな事実を、後から明かしていくようなイメージです。

つまり、人の勝手な思い込みを利用した、サプライズです。

ジャンプ繋がりで言えば、黒子のバスケの主人公黒子テツヤが使う、ミスディレクションのようなものです。

そしてこの叙述トリックですが、見事に映像で表現してしまった映画を、一つだけ知っています。

それはシックスセンスです。

カテゴリとしてはホラーだけど、グロテスクな映像ではないので、ホラーが苦手な人も比較的、見やすいかとは思います。

詳細は最後まで見ればわかりますので、興味があれば是非。

このように情報の並べ方や展開の仕方で、受け手の認識に変化を付けられます。悪く言えば、情報操作出来る訳です。

少年ジャンプを読んで熱くなってる子供にとっての未来のヒロイン

キーホルダー

小学生の頃、何処で買ったのか、なんでそう思ったのか、もう覚えてないけれど、いつか結婚した相手へ未来で渡そうとか思って買った、謎のキーホルダー。

流石にワケわかんないし、気持ち悪いな。と思って今の嫁さんには渡していません。

かといって捨てられもしないし。行き場の無いまま今も部屋の何処かに眠っています。

だからこの、未来のヒロインへという描写には、凄くシンパシーを感じてしまいます。

こんな風に、小学生の目線を丁寧になぞった所で、本来は輝く筈だった未来実際はボロボロになった未来が対比されます。

ここから、小学生の頃の自分から見た未来の自分と、現在の自分から見た過去の自分。

2人分の目線が、交錯するのです。

どこの何者でもない君も あの時の少年は最前列で君のことを

君だけを見ているよ 君だけのヒーロー 君だけを見ているよ

このフレーズを皮切りに、少年がジャンプ作品のヒーローへ送っていた目線が、そっくりそのまま現在の自分の背中へと向けられる。

そして少年も立ち上がるのです その声の限り振り絞るのです

この感じって、細田守(敬称略)に於ける4作目の長編映画、バケモノの子の、或るシーンを想起させるんですよね。

バケモノの子の主人公【蓮】が見せる少年の眼差しを思いだす

バケモノの子

バケモノの子ってのは細田守監督のアニメーション映画です。

主人公の蓮は、離婚と、事故で、両親を失った9歳の少年。

人間界とは別の世界である、バケモノの世界(渋天街)に迷い込んでしまい、粗暴で下品なバケモノ、熊徹の弟子になることで転がっていく話です。

誰もがリスペクトするような、品格と強さを宿すバケモノ、猪王山と、熊徹が、序盤で衝突するシーンがあります。

当然、その場に居たバケモノ達の全員が、猪王山を応援し始めます。

そんな中、誰にも応援されず、1人で足掻く熊徹の姿を見た蓮は、嫌いな筈の熊徹に向けて、思わず「負けるなー!!!」と叫んでしまうんですよ。

これは蓮自身が、似たような境遇を経験していて、孤独な気持ちをよく知っているからこそ、発してしまった声援だったんだと解釈しています。

不思議な事に、似ているって事はそれだけで、共鳴の理由になってしまうんですよね。

これを契機に、蓮は熊徹の弟子になる事を決意するのです。

つまり、このフレーズが描き出している小学生の目線は、蓮の、あの真っ直ぐな目線に近いものがあると思うんですよ。

※以下は2年前に撮った、渋谷の地下広告。

バケモノの子の広告

バケモノの子渋谷地下広告

週刊少年ジャンプの曲の後半で畳み掛ける怒涛のイメージ

どこの何者でもない君も あの時の少年は最前列で君のことを

君だけを見ているよ 君だけのヒーロー 君だけを見ているよ

というセンテンスを皮切りに、自然と血を流しながら闘うジャンプ作品のヒーロー達の姿が、自分と重なって見えてくるんですよね。

ここからの、言葉の追撃に、僕の感傷はやられてしまう訳です。

ナレーションをつけてさ 瞬きひとつせずに見てるよ

やっとこっから勇者は 栄光に向かい立ち上がるのです

血まみれになったプライドも さらに強く強く握りしめ 仇を取りにいくのです

自分を捕まえにいくのです

そして少年も立ち上がるのです その声の限り振り絞るのです

ついにドアは光を放って開かれる

此処が一番ぐっと来るセクションでした。

音と言葉に畳み掛けられて、普段、封じられている感情が、溢れ出した部分なんですよね。

此処までの、目線のグラデーションが上手いなーと。

自分を応援する、自分。

構造的には、5thアルバム、アルトコロニーの定理の6曲目、One man liveに近しいものがあると思います。

内省的な自分の内部の世界。

他の誰にも関係無い世界。

そこで起こっている出来事。

僕には、こういったアプローチが1番信用出来ます。いやー好きですわぁ。

君を庇って散った夢は

夜空の応援席で見てる

出典:Stage of the ground

BUMPOFCHICKEN 藤原基央

悟空の「わくわくすっぞ」っていう象徴的な常套句

結局僕は、子供が瞳を輝かせて何かに憧れている姿や、そこに映る景色に弱いのだと、改めて自覚しました。

悟空が「オラ、わくわくすっぞ」とか言うけど、要は、あの感じですよ。

なんかね、「これ程に美しい姿は無い」って言い切りたくなるくらい、少年の愚直さってのが、好きなんですよね。

そこに位置する琴線こそが、僕にとって「美しい」という感情を生じさせる、源泉地帯なんだと思います。

ほんと、RADWIMPSの週刊少年ジャンプには、不意打ちを食らいました。

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mikio
以上、mikioでした。ありがとうございました。
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