RADWIMPSの「週刊少年ジャンプ」を考察

2019年3月2日バンドレビュー

自分で自分を応援

1年前の話になりますが、RADWIMPSの8thアルバムである、人間開花をiTunesで同期しました。皆さんご存知、前前前世が収録されているアルバムです。

早速ファミレスでiPodをポケットから取り出して、アルバムの流れに耳を澄ませていたんですよ。そして、8曲目の「週刊少年ジャンプ」と云う曲に差し掛かります。個人的には興味深いタイトルです。

どんな曲なんだろうと何気無く聴いていたら、曲の終盤に向かうと同時に、気付いたら、メガネと頬の隙間から涙がボロボロ落ちていました。

突如、感情の波が押し寄せて来て、びっくりしたと同時に、ファミレスで1人号泣してるのも危ういので、慌ててニットの袖で目元を隠しました。

これ程までに、感情が光り出す瞬間を迎えるのは久しぶりだったんですよね。

その時感じた、言葉を手渡していく過程。つまり詩の構成が興味深かったので、この感情の流れを改めて自分なりに考察してみました。

こんなのはナンセンスだけど、言語化せずになんとなく忘れてしまう事の方が自分にとっては不毛なので、此処に残します。

※もし未聴で曲に興味を持っている方であれば、以下はネタバレになるのでご了承下さい。

歌詞引用

本当は歌詞を分離させたくはないんですが、公式YouTubeは期間限定の動画だったので、現在は紹介出来ません。リリースされてからもう1年以上経つので、好きな人は流石に既に聴いてる筈でしょう。と云う理由から、便宜上此処へ引用してみます。

週刊少年ジャンプ的な未来を 夢みていたよ

君のピンチも 僕のチャンスと 待ち構えていたよ

毎晩少年ジャンプ的な夢で 忙しくてさ

汗まみれで朝起きるたび 命カラガラで

ママに「おはよう」

机は窓際 君のとなり

遅刻と罰掃除と居眠りだってヒーローはそうじゃなくちゃって

キザでキラキラした台詞も

使う予定なんかはないけど ちゃんと毎晩お風呂でこっそり唱えるよ

未来のヒロインにいつか渡すために

誰一人内緒で 育てるんだよ

週刊少年ジャンプ的な未来を 夢みていたよ

君のピンチも 僕のチャンスと 待ち構えていたよ

きっとどんでん返し的な未来が僕を待っている

血まみれからの方がさ 勝つ時にはかっこいいだろう

だから今はボロボロの心にくるまって 夢をみる

縮んだ心に なんとか釣り合うように

丸めてた猫背ももうやめてよ 下を向いても あの頃の僕はいないよ

「ほら僕は ねぇ僕はここだよ」

どこの何者でもない君も あの時の少年は最前列で君のことを

君だけを見ているよ 君だけのヒーロー 君だけを見ているよ

ナレーションをつけてさ 瞬きひとつせずに見てるよ

やっとこっから勇者は 栄光に向かい立ち上がるのです

血まみれになったプライドも さらに強く強く握りしめ仇を取りにいくのです

自分を捕まえにいくのです

そして少年も立ち上がるのです その声の限り振り絞るのです

ついにドアは光を放って開かれる

週刊少年ジャンプ的な未来を 夢みていたよ

僕のピンチは 僕のチャンスと 待ち構えていたろう?

週刊少年ジャンプ的な未来を 夢みていたよ

君のピンチも 僕のチャンスと 待ち構えていたよ

きっとどんでん返し的な未来が僕を待っている

血まみれからの方がさ 勝つ時にはかっこいいだろう

だから今はボロボロの心を隠さないで 泣けばいい

出典:週刊少年ジャンプ

RADWIMPS 野田洋次郎

叙述的に認識のレイヤーが重ねられる

では、順を追ってこの歌詞のメカニズムについて考えてみます。

曲を聴き始めたリスナーの、冒頭のぼやっとした認識としては、男のオーソドックスで、ドリーミーな感覚を展開するようなアプローチですね。

男と云う生き物は基本的に、見えない敵と闘っているのが世の常であります。

それに対して

ママに

と云う単語で、この曲の一人称が子供目線である事が明示されます。

それからは

  • 机は窓際
  • 君のとなり
  • 遅刻と罰掃除

この単語の連なりによって、その子供が、小学生の年代であると推測され、人物像が限定されて来ます。そこからは暫く、小学生の目線描写が散りばめられる展開となる訳です。

ところが

だから今はボロボロの心にくるまって 夢をみる

と云うフレーズで、今までの描写が一気に、過去の回想だった。と云う予期していない、ちょっとした叙述トリックがぶっ込まれます。

下を向いてもあの頃の僕はいないよ

このフレーズで、完全にこれまでの描写が過去に持ってかれた事が確定します。そして、現在の青年なのか社会人なのか解らないけど、大人の立ち位置に目線がジャンプする訳です。

叙述トリックとは

叙述トリックと云う手法は、小説特有の手法です。従って、映像で表現するのは難しい表現です。何故なら、文章に仕掛けを施して、読者にミスリードを仕掛ける方法だからです。

どんな手法かと云うと、例えば「俺は今日もバーカウンターに座り、タバコに火を灯した」なんて描写があったとします。

一見男だと思いますよね。しかし、実は一人称を「俺」と呼称する女の話だった。みたいな事実を、後から明かすようなイメージです。

つまり、人の勝手な思い込みを利用したサプライズです。

ジャンプ繋がりで言えば、黒子のバスケの主人公黒子テツヤが使う、ミスディレクションのようなものです。

そしてこの叙述トリックですが、見事に映像で表現してしまった映画を、一つだけ知っています。

それはシックスセンスです。カテゴリとしてはホラーだけど、グロテスクな映像ではないので、苦手な人も見易いかとは思います。

詳細は最後まで見ればわかりますので、興味があれば是非。

このように情報の並べ方や展開の仕方で、受け手の認識に変化を付けられます。悪く言えば、情報操作出来る訳です。

未来のヒロインにいつか渡すために

キーホルダー

何処で買ったのか、なんでそう思ったのか、もう覚えてないけれど、小学生の頃にいつか結婚した相手へ、未来で渡そうと思って買った謎のキーホルダー。

流石にワケわかんないし、気持ち悪いな。と思って今の嫁さんには渡していません。かといって捨てられもしないし。行き場の無いまま今も部屋の何処かに眠っています。だからこの、未来のヒロインへと云う感覚には凄くシンパシーを感じてしまいます。

こんな風に、小学生の目線を丁寧になぞった所で、本来は輝く筈だった未来実際はボロボロになった未来が対比されます。

此処から、小学生の頃の自分から見た未来の自分と、現在の自分から見た過去の自分。2人分の目線が交錯するのです。

どこの何者でもない君も あの時の少年は最前列で君のことを

君だけを見ているよ 君だけのヒーロー 君だけを見ているよ

このフレーズを皮切りに、少年がジャンプ作品のヒーローへ送っていた目線が、そっくりそのまま現在の自分の背中へと向けられる。

そして少年も立ち上がるのです その声の限り振り絞るのです

この感じって、細田守(敬称略)に於ける4作目の長編映画、バケモノの子の、或るシーンを想起させるんですよね。

バケモノの子

バケモノの子は、離婚と事故で両親を失った9歳の少年である主人公、が、人間界とは別の世界であるバケモノの世界(渋天街)に迷い込んでしまい、粗暴で下品なバケモノ、熊徹の弟子になる事で転がる話です。

誰もがリスペクトするような品格と強さを宿すバケモノ、猪王山と熊徹が、序盤で衝突するシーンがあるのですが、当然その場に居た誰もが猪王山を応援し始めます。そんな中、誰にも応援されず1人で足掻く熊徹の姿を見た蓮は、嫌いな筈の熊徹に向けて、思わず「負けるなー!!!」と叫んでしまいます。

これは彼が似たような境遇を経験していて、孤独な気持ちをよく知っているからこそ、発してしまった声援だったんだと解釈しています。

不思議な事に、似ているって事はそれだけで、共鳴の理由になってしまうんですよね。

これを契機に、蓮は熊徹の弟子になる事を決意するのです。

つまり、このフレーズが描き出している小学生の目線は、蓮の、あの真っ直ぐな目線に近いものがあると思うんですよ。

※以下は2年前に撮った、渋谷の地下広告です。

バケモノの子の広告

バケモノの子渋谷地下広告

そして、自然と血を流しながら闘うジャンプ作品のヒーロー達の姿が、自分と重なって見えてくるような、言葉の追撃にやられてしまう訳です。

ナレーションをつけてさ 瞬きひとつせずに見てるよ

やっとこっから勇者は 栄光に向かい立ち上がるのです

血まみれになったプライドも さらに強く強く握りしめ 仇を取りにいくのです

自分を捕まえにいくのです

そして少年も立ち上がるのです その声の限り振り絞るのです

ついにドアは光を放って開かれる

此処が一番ぐっと来るセクションというか、畳み掛けられて泣いてしまった部分なんですよね。

此処までの目線のグラデーションが上手いなーと。

自分を応援する自分。

構造的には5thアルバム、アルトコロニーの定理の6曲目、One man liveに近しいものがあると思います。

内省的な自分の内部の世界。誰にも関係無い世界。そこで起こっている出来事。

僕にはこういったアプローチが1番信用出来ます。大好きです。

君を庇って散った夢は

夜空の応援席で見てる

出典:Stage of the ground

BUMPOFCHICKEN 藤原基央

最後に

結局僕は、子供が瞳を輝かせて何かに憧れている姿や、そこに映る景色に弱いのだと自覚しています。

なんか「これ程に美しい姿は無い」って言い切りたくなる位、好きなんですよね。

そこに位置する琴線こそが、僕にとって「美しい」と云う感情を生じさせる源泉地帯なんだと思います。

Left Caption
mikio
以上、mikioでした。ありがとうございました。
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